2022年版カカオバロメーターの要約(日本語版)を初めて発行〜カカオ産業が抱える課題の解決には、政府の政策と企業の購買行動の変革が不可欠〜

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「子ども・若者が自らの意志で人生や社会を築ける世界をつくるために、子どもや若者の権利を奪う社会課題を解決する」ことをめざし活動する認定NPO法人ACE(東京都台東区、代表 岩附由香)は、チョコレートの原料カカオの生産における児童労働の撤廃をめざし、日本国内のステークホルダーとの連携に加え、国際的なルールメイキングにおける重要なアクターへの働きかけを強化してまいりました。

ACEはこの度、持続可能なカカオ産業の実現をめざす24の市民社会組織や貿易連合で構成されるネットワーク VOICE Networkの会員とともに、カカオ産業が抱える課題に関する共同報告書「Cocoa Barometer 2022 (以下、2022年版カカオバロメーター)」を発行し、当報告書エグゼクティブサマリー日本語版を発行いたしました。

カカオ農家とその家族は、児童労働、ジェンダー不平等、(乳幼児の)栄養不良、教育へのアクセス不足、医療施設や衛生設備の不足、小農や労働者、小作人の人権侵害など、未ださまざまな課題に直面しています。これら課題の根底には、カカオ農家の貧困があり、カカオ農家の収入をいかに「生活所得」(生活に最低限必要な所得の水準)に到達させるかについて、近年国際的な議論が重ねられています。また、森林伐採や気候変動などの環境問題も、依然として大きな懸念材料となっています。

2022年版カカオバロメーターでは、世界のカカオのサプライチェーンが抱える課題は、カカオ豆の取引価格の引き上げを組み合わせて取り組まなければ根本的な解決が難しいとしています。 貧困対策としてカカオの増産をめざすカカオ生産国内外の政府によるトップダウンの戦略は、チョコレート産業を支援する一方で、むしろカカオ農家にとっては必要な資材や労働などのコストが増えるため、手取りの収入は減ってしまうことが調査によるデータで明らかになりました。これに加えて、生産国における物価の高騰も、西アフリカのカカオ農家の生活をさらに圧迫しています。もはや、カカオの生産性向上と収入手段の多様化をめざした支援策だけでは生活所得のギャップを埋めることは難しく、カカオの取引価格の引き上げなしには、農家の収入向上への最終的な効果は望めないことがわかりました。

VOICE Networkのディレクター、アントニー・ファウンテン氏は、「生産性向上や農地面積の拡大は、世界のカカオ・サプライチェーンに存在する無数の課題解決において、単独では決して機能しない」と述べ、「生活所得の格差を是正するためには、カカオに対して支払う金額をもっと上げていくことが不可欠。生活所得のギャップを埋めるためにコートジボワールとガーナで行われている所得適正化のための補償金(LID)は、状況改善に向けた必要な最初のステップではあるが、農産物価格を確実に上げるために、企業はそれ以上のことを実施する必要がある」と述べています。

過去20年間、カカオセクターでの支援内容のほとんどは、農家自身に焦点を当てたもので、持続可能性にかかる課題に取り組むために必要な政府の政策や購買慣行の改革には手が付けられないままでした。本報告書では、課題解決のためには、公的機関による政策の改善、民間企業による購買活動の改善、農家による農業実践の改善の、3つの側面で行動を起こす必要があると結論づけています。

その中で、カカオを含むグローバルなサプライチェーンにおける環境及び人権侵害の予防と是正を目的とした人権デュー・デリジェンスをはじめとする「ビジネスと人権」の取り組みは、より透明性の高いサプライチェーンの実現に向けた第一歩として歓迎されるものです。これは、企業が調達慣行について説明責任を果たすために不可欠なものですが、このような前向きな政策展開も企業がすぐに行動を起こさなければ、最終的には無意味なものになってしまいます。

児童労働の撤廃に向け、ガーナのカカオ生産地での直接支援や企業との連携、国際的な提言活動に長年取り組む、ACE共同創業者で副代表の白木朋子は、「カカオ産業での児童労働の解決のためには、日本国内の企業との連携に加え、グローバルレベルの重要なアクターを動かしていくことが重要だと感じ、2021年10月にVOICE Networkに加盟した」と述べ、「国際レベルでの課題認識を日本語に翻訳して届けることで、日本でも課題に対するより深い理解を促進し、政府、企業、市民社会組織などが各立場に応じたアクションや具体的な連携を進めることに役立てたい」と期待を込めて呼びかけています。

Cocoa Barometer 2022(2022年版カカオバロメーター)

2022年版カカオバロメーター エグゼクティブサマリー(日本語):https://voicenetwork.cc/wp-content/uploads/2023/02/Executive-Summary-2022_Japanese_final.pdf

2022年版カカオバロメーター エグゼクティブサマリー(英語):https://cocoabarometer.org/en/2022-cocoa-barometer-executive-summary/

2022年版カカオバロメーター 本文(英語): https://cocoabarometer.org/en/

※本文、エグゼクティブサマリーともに、フランス語とスペイン語でも発行されています。

報告書の内容への問い合わせや勉強会実施のご要望などについては、本ページ末尾の問い合わせ先までご連絡ください。

VOICE Networkについて

持続可能なカカオ産業の実現をめざす団体で構成されるネットワーク。オランダに事務局を置き、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア・太平洋、アフリカの各地域・国で活動する市民社会組織や貿易連合24団体が加盟(2023年2月現在)。

カカオ産業が抱える課題として、生活所得(農家の収入向上)、人権(児童労働を含む)、環境、透明性とアカウンタビリティ向上に焦点を当てて、主に企業や政府への政策提言を行っています。調査報告書Cocoa Barometer は2009年に第1弾を発行し、2016年以降は隔年で発行しています。

そのほか、カカオ生産国と消費国の対話や、EU人権デューデリジェンス・ガイドラインへの政策提言、見逃されているテーマに関する調査、チョコレート産業の中に根付く力関係の是正への取り組みなど、活動の範囲は多岐にわたります。

認定NPO法人ACE(エース)について

ACEは、「子ども・若者が自らの意志で人生や社会を築ける世界をつくるために、子どもや若者の権利を奪う社会課題を解決する」ことをパーパス(団体の存在意義)に掲げ、インド、ガーナ、日本で活動を展開し、児童労働の撤廃や子どもの権利の普及に関して世界に対して提言活動を行っています。インドの人権活動家、カイラシュ・サティヤルティ氏(2014年ノーベル平和賞受賞)が呼びかけ、1998年に世界103カ国で展開された「児童労働に反対するグローバル・マーチ」の日本での実施をきっかけに活動を開始。2022年12月で設立25周年を迎えました。

ACEのカカオ産業の児童労働撤廃への取り組みについて

ACEは、カカオ生産地における児童労働の解決に向けて、2009年から「しあわせへのチョコレート プロジェクト」を実施。ガーナのカカオ生産コミュニティにおける「スマイル・ガーナ プロジェクト」のほか、森永製菓や有楽製菓、江崎グリコなどと連携して、日本企業のカカオのサプライチェーンにおける児童労働の予防と撤廃の仕組みづくりを実施。現地支援の知見を活かし、2018年からは、ガーナ政府による「児童労働フリーゾーン(CLFZ)」認定制度の構築支援に取り組んでいます。CLFZ実証実験の成果を2022年5月に南アフリカ、ダーバンで開催された「第5回児童労働撤廃世界会議」にて報告。2020年1月に設立された「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」(事務局:JICA)の立ち上げにも協力。2021年12月にはプラットフォーム内に「児童労働撤廃分科会」を発足させ、日本のチョコレート業界、政府機関、NGOによる連携を推進しています。

その他詳細については、下記のサイトをご覧ください。

「しあわせへのチョコレート プロジェクト」

「チョコレート企業との連携」バレンタインデーに向けた企業との連携事例

「児童労働フリーゾーン(CLFZ)」認定制度の構築支援について

「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」について
業界団体、食品メーカー、商社、NGO、コンサルティング企業など49団体、94個人が参加(2022年12月22日時点)。2022年9月に、同プラットフォーム児童労働撤廃分科会の参加組織が共同で策定した「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」を発表。大手メーカーを含む24組織が賛同を表明。

VOICE Network加盟について

 

PDFのプレスリリースはこちら

2022年版カカオバロメーターの要約(日本語版)を初めて発行〜カカオ産業が抱える課題の解決には、政府の政策と企業の購買行動の変革が不可欠〜

お問い合わせ先

認定NPO法人ACE 佐藤、川村
Eメール:press%acejapan.org(%を@に変えて送信してください)
電話:03-3835-7555(受付時間:平日午前10時~午後5時)

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  • カテゴリー:プレスリリース
  • 投稿日:2023.02.08